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認識が定着しつつあるように感じました。「将来も部活動を続けますか」という質問に対して、約3割の生徒が「同じ種目を続けます」と答えています。さらに「違う種目」を希望する約2割の生徒をあわせると、半数に達し、生涯体育・スポーツの観点からみれば、運動部活動は評価に値するものだと思います。
「違う種目」への変更を希望している生徒に着目すると、ひとつの種目に打ち込むことにより、別の面での自己の適性を見いだしたものや、今の種目からの逃避意識のある生徒もいると予想されます。それらの生徒も含め「文化的な活動」を指向する生徒や「わからない」と答えた生徒に対して、日常の活動での興味づけや個々の持つ潜在能力の可能性を示唆しながら、将来的な展望を持たせる配慮も必要になるでしょう。また、「わからない」という回答に対しては、現段階では分析しにくいが、この中にも「同じ種目を続ける」という意志のある生徒がいることは予想されます。この内部把握や今後の指向に対する調査研究がこれからの課題となってきます。
中学生にとって部活動は、大半が初めての体験であり、どの学校も仮入部期間は設けていますが、個々の生徒が必ずしも自分の能力や適性に見合った部の選択をしているとは限りません。また、心身の発達・家庭環境・友人関係など、様々な内的不安定な状況があり、たいへん意志の移ろいやすい時期でもあります。そういう時期だからこそ、ひとつの運動部活動を体験することにより、その部活動の深化・充実をはかり、その中から他のスポーツヘの派生、文化的な活動への展開など、様々な可能性や方向性を考えさせていく必要があるのではないでしょうか。
魅力ある運動部活動を目指すことは、つまり生涯体育・スポーツを目指していくことにつながっていきます。そのためには指導者と生徒が一体となり、生徒の部活動への参加意識を明確にさせながら、スポーツの楽しさや喜びを個々に応じて味わうことのできる指導が求められているように思われます。今後さらに、「魅力ある運動部活動を目指して」もっと幅の広い角度から考察をし、今度は具体的にモデル校等をつくって研究を進めていきたいと考えています。

 

【研究発表3】

 

生涯体育・スポーツを考えた初期段階の柔道指導について

 

池辺謙二先生

 

1 はじめに持ち込み資料のNo.1は、本県の指導者の実態調査です。ここで考えられるのは、自分の経験していない部活動の指導を担当者が多いというのが分かります。また、例えば柔道では、指導者の総数89人とありますが、前任者の転勤等で部の存続を目的として担当している顧問も、この中にはたくさんあるのではないかと思われます。こういった指導者の問題点も考えていかなくてはならないし、そして未経験であっても指導できるような指導体制をどう考えていくかが今後の課題であるように思われます。
No.2の資料は、本県における部活動の加入数を示したもです。比較する資料がありませんが、部活動に加入する生徒の数が減ってきているように思います。また、1年から3年になるにしたがって部に在籍する生徒が減っています。生徒数は年々減少しているのにもかかわらず、部の在籍数はそれと反対の状況を示しているということは、途中退部する生徒が多いと思われます。
次にNo.3は、県内117校の柔道部員数です。各学校の部員数が少なく団体戦すら組みにくい学校が出てきています。また、柔道部のある学校は、37校ですが、ここ数年で廃部になってしまった学校がいくつかあります。これらを何とかしなければ、今後もっと下火になっていくように思われます。そこで、生徒の意識調査を行い、今後さらに柔道部活動が活発になるのには、どうすればよいのか、生徒が喜んで柔道をするにはどうすればよいのかということを本研究で考えていきたいと思います。

 

 

 

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